南極の氷

「これ、本当に南極の氷なん?
「はい、本物です」
「どうして手に入れたの」「さあ・・・」

 先月、砺波高校の「砺高祭」に行った時、「理数科展示室」での私と係りの生徒の会話です。 彼が、近くにいた級友に尋ねると「なんか、先生が自衛隊の人からもらったらしいです」という。

教室を半分に仕切った部屋の奥の所に生徒用の机が一つ。 その上に水の入ったグラスが2つ並べてあり、氷のかけらが浮かんでいた。 「普通の氷」と「南極の氷」との小さな張り紙。

部屋の周囲には、ウニの発生メカニズムと、南極大陸の氷についての説明をびっしり書きこんだ紙が張り巡らしてあった。 私の悪い癖で、すぐに教師根性が頭をもたげてきて、

「本物の南極の氷なんて、普通は絶対に見られへん物やろ。 そんな珍しいものがあるのに、なんでもっと大きく宣伝せえへんのん。 入り口に「南極の氷を見よう」と大書して人を惹きつけな。 君ら、感受性が足らんのと違うか」と説教してしまった。 後日、砺波高校の塾生たちに聞いても大部分の生徒が「そんなん見てないわ」と言っていた。

「昨日の晩、中秋の名月やったけど、みんなお月さん見た?」 
全員、「見なかった」の答え。

「昨晩のお月さんは本当に大きくてきれいやったよ。 お母さんらからも話がなかったんか? テレビやゲームばっかりしとかんと、もっと日本の伝統というもんを大切にせなあかんよ」

 日本の月探査ロケット「かぐや」の打ち上げが成功した直後だし、月には兎もかぐや姫もいないことは分かりきっているが、それは科学知識の話。 夜空に大きく浮かぶ月を愛でるのは心の問題。 お団子やススキを供える必要はありません。 みんなで月を眺めて手を合わせるだけでいいのです。

 2年ほど前、高3クラスで、日本の宇宙探査ロケット「はやぶさ」が2年半の飛行の末、直径わずか700メートルほどの小惑星から、土のサンプル採取に成功したという英文を読みました。

「ただ単に内容が理解できたというだけではあかんよ。 現代科学技術で、こんなことまで可能になっていることに対してすごいなあーと感じなあかんのやよ」と話しました。

 前回のお便りで紹介した「地球のステージ」に、塾を休んでまで見に行ってくれた中3生が、「本当に素晴しかった」と言ってくれたので、勧めた甲斐があったとホッとしました

 子供たちには、単に勉強ができるだけでなく、何事にも好奇心を持ち、感受性が豊かで、小さなことにでも感動できるような人になってもらいたいと願っています。 ご家庭での、お父さん、お母さんの日ごろの態度が一番大切だと思います。

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